十勝海岸の17世紀津波痕跡
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北海道東部太平洋沿岸を襲った17世紀の巨大津波痕跡

十勝海岸の17世紀津波痕跡

Ta-b(1667年樽前山起源)およびUs-b(1663年有珠起源)直下に位置し,明瞭なファブリックを示す17世紀津波堆積物.【写真: 七山 太】

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日高山脈に発し,直接太平洋に注ぐ歴舟川に代表される南十勝の大河川は,最終氷期に扇状地を拡大し,後氷期には離水し段丘化した.これらの段丘面は広尾から大樹にかけての沿岸域にほぼ連続的に分布するものの,段丘面の標高は2~30mと様々な高度を示し,海側は切り立った海食崖をなしている.これらの段丘面はTa-c2降灰直前(約2.5 ka)に離水した最低位段丘面である.海食崖には,最終氷期に形成された段丘礫が広く露出し,これをローム層と現土壌が広く覆っている.

十勝海岸の海成段丘面上における津波痕跡の初期の記載は北海道大学の平川一臣教授によって報告されている.これらは共通してTa-b(1667年樽前山起源)およびUs-b(1663年有珠起源)直下に位置する.これらは,Nanayama et al(2003)が道東太平洋沿岸域において広域にイベント対比を行っている17世紀のイベント堆積物に対比される可能性が極めて高い.

大樹町旭浜の露頭におけるイベント堆積物の最大層厚は5cmであり,細粒砂~中礫の粗粒砕屑物からなり,粗粒砂~中礫への逆級化構造が認められる.但し,その基底部には明瞭な浸食面が認められない.また,円盤状~小判状を呈する礫が多い.これに対し,最も海から離れた地点においては,層厚1.5cmの中~細粒砂が土壌に散在する産状しか確認できない.このように,イベント堆積物の層厚と粒度は,汀線距離とともに減少しており,旭浜の場合,汀線から664.8mまで津波痕跡を確認することができた.

さらに,津波礫層の一部には上げ潮方向を示す明瞭な覆瓦構造やデューン構造が観察された.しかも,これらの堆積物に含まれる礫の長軸(a軸)は,インブリケーションの傾斜方向と平行に配列している.同時に本層は,細粒砂から細礫~中礫への逆級化構造を示し,掃流状態での粒子衝突による分散圧力(バグノルド効果;Bagnold, 1954)によって粒子支持が行われたと判断される.しかし,今回の検討の結果,イベント堆積物基底部には明瞭な浸食面が認めらないことが分かった.これは遡上流により土壌が拡散され,海浜から輸送されてきた砂粒子と混在し,両者が流水中で淘汰される前に定置したためと考えられる.これらの諸特徴は,この種のイベント堆積物が陸上遡上時に波浪の営力ではなく,“高密度乱泥流(Lowe, 1982)のような一方向流”によって運搬され,定置したことを暗示している.

【執筆者:重野聖之・石井正之・七山 太】

所在地

大樹町

参考文献

七山 太・重野聖之・添田雄二・古川竜太・岡橋久世・斎藤健一・横山芳春・佐竹健治・中川 充,2003,北海道東部,十勝海岸南部地域における17世紀の津波痕跡とその遡上規模の評価.活断層・古地震研究報告,no. 3, 297-314.
Nanayama, F., Satake, K., Furukawa, R., Shimokawa, K., Shigeno, K., Atwater, B.F., August 2003, Unusually large earthquakes inferred from tsunami deposits along the Kuril Trench. Nature, 424, 660 – 663.

 

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