夕張市白金川の白亜紀海洋無酸素事変の露頭
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9,300万年前の大事件の証拠

夕張市白金川の白亜紀海洋無酸素事変の露頭

白金川右岸の露頭全景:手前(上位)は凝灰岩が挟在する砂岩泥質砂岩互層で露頭には凹凸がある.人がいる付近に黒色泥岩が露出している.上流の崖は泥岩優勢のタービダイト砂岩と泥岩の互層である.【写真: 石井 正之】
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海洋無酸素事変の露頭:右手の砂岩層付近から左手の黒いリュックの付近までが黒色泥岩である.中央のノジュールのある付近および風化により褐色化している部分では黄鉄鉱が散点している.【写真: 石井 正之】
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黒色泥岩の始まる部分(上流側):砂岩が挟在する緑がかった層から黒色の層に変化している.【写真: 石井 正之】
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黒色泥岩の終わる部分(下流側):折尺の右端付近から左側は,地層の色が緑色に変わる.白い薄層は凝灰岩である.【写真: 石井 正之】
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 夕張シューパロダム上流の白金川(しろがねがわ,しらきんがわ,はっきんがわ)に,白亜紀中期9,300万年前に起きた海洋無酸素事変 OAE2(Oceanic Anoxic Event 2) の露頭がある.この露頭は蝦夷層群佐久層に属し,走向・傾斜は NS,80°E であるが,地層は逆転しているので,東(上流)に向かって下位の地層となる.

 ここで,白金川右岸の露頭を追っていくと下流では緑灰色の生物擾乱の発達する泥質砂岩であるが,生物擾乱の弱い黒色泥岩となり,さらに上流では生物擾乱の発達する暗灰色泥岩とタービダイト砂岩の互層となる.下流側の緑灰色泥質砂岩が白金(はっきん)泥質砂岩部層に相当する.このほかの岩相上の特徴としては,黒色泥岩部分は砂岩や酸性凝灰岩がほとんど挟在せず,黄鉄鉱の結晶が肉眼で認められることが挙げられる.

この黒色泥岩では,1)浮遊性有孔虫・底生有孔虫の産出が極端に少なくなっている,2)それまで生息していたイノセラムスが消滅する,3)硫黄含有量・有機炭素含有量がわずかに高い,といった特徴がある.

 その他,諸々の証拠から,この黒色泥岩はチューロニアンとセノマニアンの境界で発生した世界的な海洋無酸素事変 OAE2と関連して海洋の溶存酸素濃度が低下したことを示していると考えられる..この事変の原因は,世界的な火山活動の活発化とそれに伴う二酸化炭素濃度の増大であることが近年の研究では指摘されている.

【執筆者:石井 正之・高嶋 礼詩】

既存の指定など

富良野芦別道立自然公園

所在地

夕張市 白金川

参考文献

安藤寿男ほか〔2007)蝦夷前弧堆積盆の海陸断面堆積相変化と海洋無酸素事変層準:夕張〜三笠.地質学雑,第113巻 補遺,185-203.
Hasegawa, T., 1997. Cenomanian-Turonian carbon isotope events recorded in terrestrial organic matter from northern Japan. Palaeogeography, Palaeoclimatology, Palaeoecology 130, 251–273.
栗原憲一・川辺文久,2003.セノマニアン/チューロニアン期境界前後の軟体動物相:北海道大夕張地域と米国西部内陸地域の比較.化石,74巻,36-47.
Takashima,R. et al.(2004)Geology and stratigraphy of forearc basin sediments inHokkaido,Japan:Cretaceous environmental events on the North Pacific margin.Cretacous Rsearch 25,365-390.