崕山(きりぎしやま)の石灰岩
このような特異な地質景観は北海道ではここにしかなく,日本国内でも筆者の知る限り,ない.この独特な山稜を作っているのは,白亜紀蝦夷層群の下部に挟在する石灰岩体である.前弧海盆堆積体の中にこのような大規模な石灰岩体が発達するのは極めて不思議で珍しいことであるが,当時の浅海域から地すべりによってもたらされた大規模なオリストストロームと考えられている(佐野,2001など).石灰岩山稜の周囲は,蝦夷層群の泥岩砂岩互層からなる.
崕山の石灰岩体は,その独特な景観にもかかわらず,実際に目にした人は多くない.それは,国道など通常の道路からはまったく見えない山奥にあるためである.この景観を見るためには,芦別側から惣芦別川に沿って林道を10 km以上入る必要がある.それに加え,崕山周辺は高山植物保護のため1999年から厳重な入山規制が実施されており,たとえ学術調査であっても単独の立ち入りは認められておらず,崕山自然保護協議会の許可と立会いが必要となっている.
所在地
芦別市 惣芦別川上流 崕山
リンク
参考文献
吉田 尚・神戸信和(1955)5万分の1地質図幅『幾春別岳』および同説明書.北海道開発庁,31 p.
佐野晋一(2001)蝦夷層群下部“石灰岩”オリストリスからの炭酸塩プラットフォームの復元.日本地質学会第108年学術大会講演要旨,244.