正断層性割れ目噴火口群
知床半島中軸部の正断層と割れ目噴火口群
知床半島中軸部には第四紀火山群が鎮座するが,その火山をつなぐような正断層群の発達がみられる.九州を除いた日本列島域では主に太平洋プレートのカップリングによる圧縮場が卓越しており,知床半島で見られるような正断層群が発達するのは非常に稀である.知床火山群のひとつ,天頂山では,長さ2kmにおよぶ割れ目火口が形成されているが,これは正断層群で特徴付けられるような伸張応力場の影響によるものと思われ,北海道では極めて珍しい噴火形態であるといえる.
このような特徴的な地形発達・応力場・噴火口形成が行われている知床半島中軸部は,極めて特異な地質環境にあることが想像されるとともに,知床硫黄山でみられる硫黄噴火現象を含め価値ある地形・地質をもつものと考える.
既存の指定など
世界自然遺産
知床国立公園
所在地
斜里町
羅臼町
リンク
参考文献
北海道開発庁(1970)5万分の1地質図幅「羅臼および知円別(網走-29,30)」および同説明書.34p.
守屋以智雄(1983)日本の火山地形.東京大学出版会.
伊藤陽二・山岸宏充(1996)北海道東部・知床半島における新たな活断層の発見,地球科学,50,1,43-53.
後藤芳彦ほか(2005)北海道知床半島天頂山火山の噴火年代(演旨),日本火山学会講演予稿集,14-14.
宮地直道ほか(2000)羅臼火山における最近22000年間の噴火史.火山,45,75-85.
斜里町立知床博物館(編)(2009)知床の地質(しれとこライブラリー⑧).北海道新聞社,202p