溶岩ドームと火砕流でできた山:恵山火山
恵山御崎の石灰華と鍾乳洞
現在では治山工事でほとんど見られなくなってしまったが,恵山南東麓の御崎集落の背後の斜面には,石灰質の温泉・鉱泉の沈殿物である石灰華が広く分布していた.昭和初年にこの地域を調査した北海道庁技師福留忠男は「恵山,磯谷温泉付近に古期温泉の沈殿物たる石灰華の懸崖あり.その産状より察するに温泉大瀑布の遺骸とみるを得べく壮観を極む」と,その規模を記述している.旧石田温泉の沢の上流では現在も石灰質沈殿物の生成が続いており,かつては斜面のあちこちで温泉の湧出があったのであろう.温泉とその沈殿作用がとまると,斜面にへばりついていた石灰華は溶けはじめ,雨を引き金に崩壊するなど厄介者になってしまった.現在は,ほとんどの石灰華は削り取られるか,フレームで縫い付けられている.
1999年10月,斜面防災工事のため石灰華を掘削していたところ,奥行き6mほどの洞穴が出現.ツララ石や石筍,フロウストーンなど多くの鍾乳石が見られることから,保存の措置がとられた.鉱泉や温泉の沈殿物に洞窟が形成されているというのは極めて珍しく,少なくとも国内にその例はない.
所在地
函館市 恵山区
参考文献
北海道立地下資源調査所(1969)5万分の1地質図幅「恵山(札幌-87)」および同説明書.62p.
北海道防災会議,1983,恵山 火山地質・噴火史・活動の現況および防災対策.北海道における火山に関する研究報告書,第9編,99p.
田近淳,2000,恵山町御崎地区で発見された第四紀石灰華堆積物中に形成した鍾乳洞,北海道立地質研究所報告,No.71 ,143-150.
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