十勝平野形成初期の堆積物
義経の里 本別公園の堆積岩大露頭
十勝平野の東部に位置する本別町.町民にとってのシンボル的存在でもある本別公園は,本別町に伝わる「義経伝説」のテーマパークである.この本別公園の西側に黄~茶色を帯びた白色の絶壁がある.平行ではないが,おおよそ水平に何層も何層も礫岩・砂岩(一部,シルト岩)が累重している.これは十勝層群螺湾礫岩砂岩層と呼ばれる鮮新世の地層である.急崖は本層の上部層に相当する.下部層は上部層に比較して軟質で急崖とはならないことが多い.加えて下部層は,タカハシホタテをはじめとする海棲貝化石を産出することを特徴とする.本層は当時,南側から侵入してきた海域と陸域の境界部に形成された地層と考えられている.
なお対岸のクンタルシプイ沢の螺湾礫岩砂岩層から,より古い中期中新世(13Ma頃)に絶滅したとされるデスモスチルスの臼歯が見いだされている.これは地中に埋没・化石化した臼歯が,含有していた層の浸食・削剥に伴い,礫として再び螺湾礫岩砂岩層に取り込まれた可能性が強い.化石の年代検討においては,このような可能性が常に考慮されなければならない.
この絶壁に幅約15m,高さ約20mの武蔵坊弁慶が隠れたとされる「弁慶洞」がある.この遊歩道で本層を見学することができたが,見学時(H21.9)は落石の危険があるため立ち入り禁止とされていた.本別公園の中央を流れる本別川の河床には,螺湾礫岩砂岩層の幾つもの巨大な転石があるので,こちらで実物を観察しよう.
所在地
本別町 本別公園
リンク
参考文献
木村方一(1977)北海道中川郡本別町付近の螺湾礫岩砂岩層よリDesmostylusの臼歯発見.地球科学,31,167-170.
北海道開発庁(1959)5万分の1地質図幅「本別(釧路-32号)」および同説明書.83p.
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