厚層砂岩層から黒色泥岩へ
芦別市八月沢の月見層
芦別川左支流 八月沢川中流に採石場跡がある.ここでは中生代に堆積した上部蝦夷層群中に挟在される「月見層」とよばれる層厚50m以上の厚層砂岩が最近まで採取されていた.火山岩がほとんど産出しない芦別地域において,月見層の堅硬な厚層砂岩は重要な砕石資源であった.
この厚層砂岩は灰白色を呈する粗粒〜極粗粒砂岩で,波長の長い弱いラミナ構造が観察される.節理が発達するが非常に堅硬な岩石である.化石や生痕化石などは観察できない.露頭上部に目を向けると,厚層砂岩に黒色泥岩が累重しており,この崩壊物がベンチ面に大量に堆積している.遠目には塊状黒色泥岩に見えるが,10〜20cmの灰白色砂岩層と互層をなしている.また泥岩砂岩互層中には不規則な形状をした砂岩脈もみられる.
5万分の1地質図幅「上芦別」をみると,背斜部に月見層が尾根部を含めて露出するとされている.しかし実際には,背斜頂部に泥岩主体の泥岩砂岩互層が累重している.この累重関係では下位の砂岩層をベンチカット法で採掘するためには,軟質のため無価値な泥岩砂岩互層を掘削除去,そして場所を確保して廃棄しなければならない.このための費用は出荷される製品に付加せざるを得ない.もし地質図通りであれば・・・.地質図に求められる正確性を示す一つの事例であろう.
所在地
芦別市 八月沢川中流
参考文献
北海道開発庁(1953)5万分の1地質図幅「上芦別(札幌-6)」および同説明書. 98p.
関連するジオサイト